平成27年度 ごあいさつ
東北大学「医療工学技術者創成のための再教育システム」
REDEEM(Recurrent Education for the Development of Engineering Enhanced Medicine)
平成27年度の開講にあたって
特定非営利活動法人 REDEEM 代表理事東北大学大学院医工学研究科 医工学専攻 特任教授
山口 隆美
我が国社会をとどめることの出来ない勢いで席巻する少子高齢化、そして、平成23年3月11日の東日本大震災は、これまでの社会発展の延長上に我が国の技術開発・産業発展を展望することを許さなくなりました。東日本大震災は、これまで、安全であり、信頼に足るものとして受け入れられてきた科学技術に、人々が深刻な疑問をもち、盲目的に追従することはできないものであることを深刻に反省させました。
我が国の産業・科学技術のすべての面において質的な転換が図られなくてはならないことは明らかであり、しかも、その緊急性は非常に高いものとなっています。その最も重要な方向が、前世紀から今世紀にかけて、飛躍的かつ根底的な進歩・発展を遂げた生命科学に基礎をおき、人々の健康と福祉を直接的に対象とする医療工学とこれに関する産業の育成にあることは疑いをいれません。
東北大学では、平成13年以来、種々の国家プロジェクトの援助を受け、「医療工学技術者創成のための再教育システム」(REDEEM)のタイトルのもと、社会人技術者に対する医学・生物学・医工学の再教育プログラムを実施してきました。この再教育システムは産業社会からの賛同をうけ、持続的に実施されています。しかし、これまでの事業の実施によって、このような再教育を必要とするすべての人々を医療工学へ導く事が出来たわけではありませんし、必ずしも楽観を許さない経済状況のなかで、新しい産業分野の基礎を築くための人材の養成はますます必要となっています。我々は、いまこそ、次の時代を切りひらくための人材への投資が必須であり、人材の開発こそが危機を克服するためのほぼ唯一の鍵であると確信しています。
東北大学ではこのREDEEM事業を含む研究教育の実績に基づき、平成20年度からは我が国初となる大学院医工学研究科を設置することができ、我が国における医工学研究・教育の中心として活動しています。REDEEM事業も、これらの基礎のうえに不断に改革を続け、医工学に関する大学院教育と密接に関連した社会人再教育プログラムとして、毎年、教育内容を刷新しながらさらに充実した再教育プログラムを実施することにつとめています。
とりわけ、平成24年度からは、このREDEEMのコースを受講することにより、東北大学大学院医工学研究科博士課程後期3年の課程(博士課程)の特論講義の履修単位を取得することができるようになりましたので、医工学研究科において社会人大学院コースを目指す技術者にとっては、博士の学位取得において別途講義科目を受講する必要がなくなり、研究に専念することができます。また、毎年、基礎医学および臨床医学関連の科目の刷新を不断に行い、医療工学技術者のために、さらにブラッシュアップした内容を展開しております。
このように、REDEEMプロジェクトは成功したプログラムに安住することなく、教育内容をたゆむことなく充実させ、我が国の医工学領域の高度教育を領導するカリキュラムを提供し続けるべく東北大学大学院医工学研究科の総力を挙げて取り組んでいますので、今後ともご支援を賜りますよう、心からお願い申し上げる次第です。